川崎市の農業を一緒に盛り上げてください!

川崎市(主催者)とセレサ川崎農業協同組合(協力)、そして川崎市内の農家の、

かわさきコンテンツアワード2010 Creator Meets Agricultureに寄せる熱い期待と思いをお届けします。


大木孝一氏

大木養鶏所・大木孝一氏

カッコよく農業したいんですよね

 親父が昭和33年(1958年)頃から養鶏を始めました。僕は大学を卒業して測量の仕事についていたんですが、長男だし、物心ついた頃からいつかは家業を継がなきゃいけないと思っていたので、30歳ぐらいのときに仕事を辞めて家に入りました。

 いまでは鳥インフルエンザの問題があるのでとても無理ですけど、当時は開放型鶏舎といって、トタン屋根1枚にゲージで囲って外からニワトリが見える状態でやっていました。最高で7,000羽いました。現在は2,800羽、デカルブブラウンという種類のニワトリです。1羽が1日に1個卵を産むので、毎日約2,800個の新しい卵が産まれます。鶏舎のキャパ的には5,160羽入るんですけど、最近ちょっと減らしました。数より質を重視したいのと、昔は問屋さんに卸していたんですけど、いまは自動販売機と作業所での直売がメインなので、残った卵は1日で全部破棄しないといけないんです。最近よく食品偽造問題ってありますけど、本当に残念だし、「産みたて卵」がウリなんで、そういったところはきちんとやりたいんです。

 ハエとか害虫の問題も大変だということで、平成7年(1995年)に、現在の石川式ウインドレス鶏舎にしました。さらに5年ぐらい前から僕が中心でやるようになり、ずっと卵をブランド化したいと考えていたので、自動販売機を新しくしたのを機に、卵に「へぇーばらの恵」というブランド名をつけました。ここは「稗原(ひえばら)」という地名なんですが、昔から住んでいる人は「へーばら」と言うんです。そこからネーミングしました。

 その後、弟が手伝ってくれるようになり、いまは兄弟ふたりでやっています。去年、作業所も建て直しました。所ジョージさんの事務所「世田谷ベース」のようにカッコよくしたいいなってことでふたりで相談してガレージのような建物にし、ついでにこのつなぎっぽいユニフォームもつくったんです。形から入るタイプなんで(笑)。とにかくカッコよく仕事したいんですよね。そうしないと次の世代も育たないし、カッコよくやっていれば僕の息子も「やりたい」って思ってくれるんじゃないかなって。実際、息子はいま中学3年生なんですけど、「継ぎたい」って言ってくれているんですよ。うれしいですけど、多少は社会に出て外の空気吸ってからのほうがいいと思っているんですけどね。

大木養鶏所建物

大木養鶏所


絶妙のブランド効果

 現在は2,800羽を2グループに分け、それぞれ1年で新しいニワトリに入れ替えています。入れ替えのサイクルもほかの養鶏所より早いほうだと思います。よそで卵は食べないですね。高校生のときに学食で月見うどんを食べたんですけど、ちっとも卵に甘みがないし、なんか臭みもあって、腐ってるのかと思ったぐらいまずかった。それから外では卵が食べられなくなりました。うちの卵はどちらかというと小ぶりで若い卵です。だけど僕は、間違えなくそれが一番おいしいと思っているんです。

 現在は10個300円で販売しています。口コミだけで、HPもないですし宣伝活動もしていませんが、毎日完売状況です。特に木金土は午後早い段階で売り切れてしまいます。卵は何個からでも買えますが、大体みなさん10個を1セットで、すごい人は、10個セットをひとりで20数セット買っていきます。近所の人たちに頼まれて、まとめ買いしてるんだと思うんですけど、そういう人も多いです。お客さんは川崎市内と世田谷から来ている人もいます。あと毎日全国に宅急便で発送もしています。でもそんなに大規模にはやってなくて、買いにきたお客さんが、知り合いにも送りたいのでといったパターンがほとんどですね。

 3年ほど前に、「へぇーばらの恵」を某有名ブランドのロゴを意識してアルファベット表記に変え「HE-BARA NO MEGUMI」とし、特製の化粧箱もつくりました。反応はいいですよ。特製化粧箱は持って歩いてもおかしくないし、普通はみなさんビニール袋で買っていきますけど、贈答用には化粧箱を使うんです。お中元やお歳暮に「HE-BARA NO MEGUMI」を贈る方も多くて、その時期は卵が間に合わないほどです。特にお歳暮の時期の12月は、11月1日からの予約開始なんですが、2週間ほどで12月分が予約で埋まり、受け付け終了となります。親父の代からそういった状況でしたけど、ブランド化を強化して拍車がかかった感じです。

 ブランドものって、商品数が少ないとみなさんほしがって価値が上がりますよね。卵の数を絞ったのは、その消費者心理を突くといった狙いもありました。しかも特定の場所でしか買えないとなると、たとえば食卓に「HE-BARA NO MEGUMI」が出たときや人に贈ったときに、「この卵買うの、大変だったんだよ」ってことで話も広がるでしょ。いろいろな宣伝方法があるけれど、やっぱり口コミが一番効果的なんですよね。

「HE-MARA NO MEGUMI」と卵入れBOXく

「HE-BARA NO MEGUMI」と特製化粧箱


お菓子にコンビニ・・・・・・新たなコラボレーション

 いまのところ経営的にはうまくいっていますし、質にこだわりながら、楽しんでやっています。養鶏はそんなに儲かる仕事じゃないけれど、毎日卵が産まれて、毎日売れて、現金収入があってってことで、農作物よりは安定していると思います。いま一番の悩みはニワトリのフンの処理ですね。フンはコンポスト(生ごみ堆肥化容器)で乾燥させて肥料にして売るんですけど、その肥料が最近売れなくなってきてるんです。卵の注文が増えたことで、ニワトリを増やすことはできるけど、フンも増えちゃうんでね。簡単にはいかないんです。

 僕が子供の頃はかやぶき屋根の家に住んでいて、養鶏だけじゃなく、畑も田んぼも手広くやっている生粋の農家でした。だけど農地に尻手黒川が開通し、いまメインの収入は不動産業から得ています。だからゆとりをもって養鶏にも取り組めるようになったし、農家のイメージを変えたくてカッコいいライフスタイルを目指しながら、卵のブランド化を進めてきた結果、いい感じになってきたといったところです。

 「HE-BARA NO MEGUMI」でつくられたロールケーキ「宮前ロール」も人気のようです。殻に汚れや傷が入った卵は売りたくないので、液卵にしておすし屋さんに販売していたんですが、最近はおすし屋さんも回転ずしに押されて少なくなってきているんです。だから今後はもっと卵を使ったお菓子などとコラボレーションできると楽しいですよね。

 新しい試みとしては、今年4月に近所にオープンしたファミリーマートで「HE-BARA NO MEGUMI」を売ることが決まっています。コンビニも地元のものを売って他店と差別化をはかりたいと考えているようですし、「HE-BARA NO MEGUMI」のお客さんは50代、60代の方が多く、もう少し若い方にも知ってもらいたいと思っていたので、僕としてもアンテナショップみたいな感じでいいPRになれば面白いなと期待しているんです。


タマヒヨ

〒 216-0022 神奈川県川崎市宮前区菅生ヶ丘28-5
電話:044-977-1010
営業時間:午前10時から午前12時、午後2時から午後5時
定休日:日曜・祝日(自動販売機でのみ販売)