川崎市の農業を一緒に盛り上げてください!

川崎市(主催者)とセレサ川崎農業協同組合(協力)、そして川崎市内の農家の、

かわさきコンテンツアワード2010 Creator Meets Agricultureに寄せる熱い期待と思いをお届けします。


小泉博司氏

小泉農園・小泉博司氏

「わがままいちご」の人気に一役買ったクリエイティブの力

 小泉農園は、じいさん、親父(おやじ)そして僕と、三代にわたる農業一家です。母と妹と嫁は小泉農園のイチゴや野菜やハーブで、ジャムや焼き菓子、ハーブ調味料などをつくっています。妹はホームページや商品のラベルづくりもやっています。みんな自分の興味があることをそれぞれの責任でやっているといった感じですが、家族で協力して農業に取り組める面白さもあります。

 農家を大きく分けると果樹(かき)農家と野菜農家があるんですが、小泉農園は野菜を中心にやっています。野菜づくりにも、露地栽培と施設栽培とあって、自然環境の中で四季折々のものを季節に合わせてつくるのが露地栽培、ビニールハウスを使って生育環境をつくって育てるのが施設栽培です。じいさんと親父は露地栽培、僕が加わってイチゴづくりを始めるようになって施設栽培を増やしていき、現在は施設対露地が3対7といったところです。

 小泉農園のイチゴは、「わがままいちご」のブランド名で売っています。イチゴ栽培に取り組んで約7年になりますが、僕はクリエイターの力って本当にすごいなって思っているんです。というのも、イチゴづくりを始めるにあたり、川崎でイチゴってなんかピント来ないし、どうしたら多くの人に知ってもらえて、「ほしい」と思ってもらえるだろうと考えていたときに、「イチゴにブランド名を付ければいいんじゃない?」って知り合いのデザイナーが言ってくれたんです。彼は「わがままいちご」の箱もデザインしてくれた人なんだけど、それで彼や僕の妹や母を交えて相談し、「いっぱいぜいたくさせて育てたイチゴ」って意味を込めて「わがままいちご」と名づけた。そうしたら名前が可愛いってことで、子供たちも興味を示してくれるし、いろんなところからイチゴがほしいってお客さんが来てくれるようになった。デザイナーがつくった「わがままいちご」の箱だって、始めて2年目ぐらいまでは、「可愛いから箱だけくれ」ってお客さんもいたんだから(笑)。クリエイティブの力ってすごいですよ。

わがままいちご

小泉農園のわがままいちご


小泉農園でつながるコミュニティーの輪

 現在「わがままいちご」は全国のお客さんに発送しています。12月から配送が始まり、3月ぐらいからイチゴ狩りを受け付けています。告知はホームページ5割、チラシのポスティングを中心とした人海戦術5割といったところです。おかげさまでイチゴ狩りも大人気です。今年から試験的に自家製ピザ窯でイチゴピザも焼き始めました。子供でも簡単につくれておいしいと好評だったので、来年からはイチゴ狩りのメニューに加えようと考えています。

 平日はお母さんと子供のグループが多いんですが、畑見ながらピザつくって、畑見ながらピザを食べるっていうのもいいでしょ。孫と来たじいさんが、泣きながらピザを食べている姿を今年二人ぐらい見ましたよ。うれしかったんでしょうね、孫の手料理が食べられて。イチゴ狩りをやっている3月、4月は冬野菜が終わってこれから夏のものを植える準備期間だから、畑が空いていることが多いんですよ。だから親子で畑を走り回って遊んでもらってもいいし、「そういった体験ができる小泉農園のような場所も大事でしょ? そのためには農家の相続税を安くしたほうがいいよね」なんて話もお客さんとできる(笑)。わがままいちごは高設栽培でビニールハウスの中はバリアフリーだから、お年寄りや障害を持っている子供さんたちでもイチゴ狩りができるんです。そういったかたがたにはこちらからも声をかけています。楽しんでもらえているようだし、団体で来てもらえれば僕らもありがたいんですよ。


川崎市の全農家を応援してほしい

 かわさきコンテンツアワード2010を通して、川崎市の農家全体のファンになってくれるような人たちを開拓してほしいですね。川崎の農家にもいろんなレベルがあるから、セレサモスもそうだけど、いいものをつくる農家にばっかりファンがついちゃう。それは当然なんだけど、そうなるとデキの悪い農家はひねくれちゃうんですよ。むしろそういった農家の応援団になって、彼らの意識を高めてもらえるようなアイデアや企画がほしいですね。

 そのためにも、みなさんにどんどん川崎市の農家の畑に出向いてもらって、直接農家から野菜を買ってもらえるようになればいいと思ってるんです。で、「おいしい」とか、「昨日はおいしかったのになんで今日のはダメなの?」とか、「あっちの農家のはおいしいのになんでここのはマズイの?」といった感想を直接言ってもらえれば、農家だって意地になって頑張りますよ。クリエイターの世界もそうだと思うんだけど、相手の反応が人を成長させるんですよね。日本人の長所に、面と向かって人をけなさないとか、意見を言わない奥ゆかしさってあるけど、目の前で「これマズイ」「よくない」って言っちゃったほうがいいんじゃないかと思うんです。

 やるからには挑戦というか、なんかしなきゃつまんないですよね。それに企業からみると、「農家、甘えてんじゃねぇの?」って面もあると思いますよ。企業には税制の優遇措置なんてないじゃないですか。大企業だろうが、分野が違おうが、経営者に違いはない。ロッテの経営者だろうが、グリコの経営者だろうが、小泉農園の経営者だろうが同じなんです。だから僕は坪単価を考えて農業やってるし、それぐらいのマインドでなきゃダメだと思ってます。

 だけど農家ってバカなのか正直者なのかわかんないけど、農家で集まるとみんな自分の農法をばらしちゃうんですよね。ロッテやグリコの社長が集まって飲んでいて、製造方法をばらすヤツなんていないでしょ。露地農業は陽の当たる時間も水のかかり方も違うからまったく同じものはつくれないけど、施設農業はビニールハウスで囲んじゃってプランターみたいなものに土を入れてやるから、ほとんど同じ条件でつくれちゃう。僕らの残した技術が20年後、30年後にも引き継がれ、どんどん更新されていくわけです。施設農業にはそういった面白さもある。そんな思いがあるから、農家はどこにいっても話が合うんです。それに野菜たちはなにも言ってくれないですからね。人間同士で情報交換するしかないんですよ。

 僕は、「農家なんて野菜たちの手助けをしてる」ってぐらいの気持ちだから。つくってるのは野菜たち本人なんですよ。イチゴもトマトもキュウリもナスも、徐々に徐々に成長して実になっていくものでしょ。それを見てるとね、「こいつら頑張ってるな!」って思うんですよ。

イチゴ

〒 216-0022 神奈川県川崎市宮前区平6-8-15
電話:080-6532-5306